皆が竜崎をただ見つめていた。 その変貌に目を見張りながら。 注射は俺が一番巧い、と刺青が竜崎の縛られた左手の内側に針を刺したのは、20分程前の事だ。 薬は勘弁して下さいと訴える竜崎に、じゃあLって誰だ?とお決まりの質問を青年達は投げかけたが、 当然竜崎が答えるわけがなかった。強情な態度を貫こうとする竜崎を見て、青年達はスラックスの上から相沢の性器にナイフをあてがった。 それまで無表情だった竜崎の表情が青ざめたのは、誰の目にも明白だった。 「…空気が入らない様注意してくださいよ」 それは言い逃れできない合意の合図。 おじさんはとりあえずもういいよ、面白いから観ててみな、と言われ、相沢は首の輪はつけられたまま、また 柱に縛り付けられた。竜崎もまた足を縛られる。半端に勃ち上がったそれを放棄され、竜崎は息を詰めながら居心地悪げに 膝を閉じ、体を丸めた。 その体が徐々に震え始める。青年達がボソボソと小声で囁きあった。 「きたな」 「きたきた」 金髪が震える竜崎に歩み寄り、脇腹を撫で上げた。 びくりと竜崎の体が跳ね、顎が上がる。 「…………っ……………………………………………!!」 丸めた体が床に倒れる。青年達が大声で哂った。 「感じた?」 金髪がさも楽しそうに竜崎の頬から首筋に指を滑らせる。 「ふあっ…………………!!」 竜崎が小さく叫び、かぶりを振って黒髪を散らした。 「すげえだろ…?全身、先っぽになっちゃったみたいだろ?ほら、おっさん、見ろよ!」 金髪は竜崎の足の戒めを解き、横たわる体の足首を持って相沢に向けて大きく開いた。 そこは、空に向けて頭をもたげ、弾けそうな程張り詰めて脈打っていた。 「あ…あ…あ… あ……………」 竜崎の唇から意味をなさない声が漏れる。硬く上を向いた性器は刺激を欲して先端から蜜を垂らしていた。 腰が立たないのか、足を解放されても竜崎は膝を立てて横たわったままだった。だがそれでも、相沢の視線から 逃れようと背中でずり下がり、少しでも位置を変えようとする。 相沢は瞬きを忘れたかの如く瞳を見開き、竜崎から目を逸らす事ができなかった。 これが竜崎か?無表情で、飄々と相手を論破し、彼の心の内への侵入を決して許さない、あの竜崎が。 自分の目の前で、勃起した性器から涎を溢れさせ、白すぎる肌を内側から桃色に染めている。物欲しげに腰を震わせて。 痴態と呼べるその姿は、数十分前のふてぶてしさを皆見ているだけに、ひどく乱れている様に感じさせた。 「おにいちゃん、もっと欲しいんだろお?おじさんにちゃんとお願いしろよ」 唇を噛み締めながら、弱弱しく竜崎が頭を振る。相沢も我に返って激しく首を横に振った。 「しょーがねーなあ…。じゃ、代わりに俺が弄ってやるよ。感謝しな」 嫌々な台詞とは裏腹に、金髪は楽しそうに荒れた唇をぺろりと舐めた。 「はあっぁ、は、 はぁっ……」 「声出せよ!感じてんだろ!?このおっさんに見られてよお!」 「あああぁあ!やっ…誰がっ……!……あ、はあぁ ーーーーああ!!!」 金髪の足の間に後ろ向きに座らせられ、竜崎の両脚は相沢に向けて大きく開かれていた。見せつける様に 金髪の指が竜崎の性器の上を縦横無尽に這い回る。 金髪の指の動きは巧みだった。性を遊び道具としか思っていない彼は、行為に慣れているのだろう。青年達の会話から すると、金髪の青年は両刀らしく、あいつは穴さえあればどっちでもどんなのでもいい、と哂いまじりに囁かれていた。 欲望に弾けんばかりだった竜崎の性器は喜びに震え、先端はとめどなく透明な粘液を垂れ流している。 強制的に感じさせられて淫靡な反応を示す体に、竜崎の精神はひどく傷ついているのだろう。こんなのは自分では ない、と言いたいのか、俯いて何度も何度も黒髪を左右に散らした。 この状態でどれだけ耐えたのか。とっくに限界を超えている竜崎の性器は溢れる体液でぬらぬらと光り、 ぷっくり膨らみ薄い粘膜で包まれた亀頭を、金髪が形が変わるほど指で摺りつぶす。先端の口に指を軽く出し入れすると、 ぷちゅりと粘性の水音がコンクリートの壁に囲まれた室内にやけに大きく響いた。それに気づいた金髪が更にそこを 執拗に攻め、ちゅ、ちゅ、ぷちゅりと派手な音をたてる。 「こんなにしてよーー…えらい先走り多いなおにいちゃん…あんまりマスとか、かかねえの?そら!」 「んあああぁぁあああああああああああああああ!!」 金髪が掌と指を一際大きく上下にスライドさせると、竜崎は空を仰ぎ、白い喉をひきつらせて獣の様に鳴いた。 がくりとうなだれるのと同時に、先端からどぷりと白濁を放つ。自分の顔を打つ白濁に驚いて一瞬目を閉じ、 またゆっくり見開くと茫然と穢れを放ったそれを見つめる。自分の放った粘液にまみれ、どんどん蒼白になる顔は、 青年に奇妙な欲望を駆り立てた。 もっと汚したい。 更なる穢れで、この男の苦痛に歪む顔が見たい。 「おにいちゃん、おっとそれからおじさん……このラブドラッグの名前を教えようか」 竜崎は何も聞こえていないかの如く、瞬きひとつせず、まだ己の性器を見つめていた。 相沢もただそれを見ていた。金髪は気にせず、言葉を続けた。その後の彼らの表情に期待して。 「”KIRA” て言うんだぜ」 俯く竜崎の肩がびく、と跳ねる。 「あんた達が追ってるキラだ…。それからつけられた。じわじわと頭ん中を殺される、コレを崇拝せずにはいられなくなる、 我らのキラ。ぴったりじゃね?」 悪い冗談だ。 こういう類の馬鹿共が考えそうな悪趣味な名前。相沢は怒りを通り越して呆れるしかなかった。 軽く溜息をついてまた竜崎に視線を戻すと、竜崎は瞳を見開き、体を戦慄かせていた。そうだ。命をかけて 戦おうと決めた犯罪者の名に、体を支配されているのは竜崎なのだ。自分はただ見ているだけで、だから馬鹿な話だと 受け流す事ができる。だがーー最も忌む名前に、体を内側から愛撫されるのはどれほど不快だろう。 竜崎の唇が震える。歯の根が合わない程の震えに、相沢は異変を感じた。 「竜崎…?どうした?大丈夫か!?」 「あー、第二波がキたな。狂うよ〜?」 青年達が口笛を吹く。竜崎は震える唇に歯を食いしばる事もできず、あ、あ、と母音を切れ切れに発した。 「イくとねえ、もーっと敏感になっちゃうわけ。そういうクスリだよ。イけばイくほどもっと欲しくなる… だからいつもは女の子輪姦す時に使うんだけどな」 残虐な事を、さらりと金髪は口にした。彼らにとって性行為は腹が減ったから食事をする、というのと同じ位 軽い感覚なのだろう。薬はほんの調味料。使われる相手は、肉片でしかない食材と同じ。心など無視されて。 「お…お前ら…!!ふざけやがって!それ以上竜崎に何かしてみろ…ブッ殺すぞ!」 絶望を見ている様な竜崎の焦点の合わない瞳に、相沢はもう耐えられなかった。自分のせいで誰かが辱めを 受けている事が苦痛で堪らず叫んだが、それは青年達を更に喜ばせる結果となった。 「ふうん…やけにかばうじゃん。もしかして、こいつLだったりして?」 「ふぁあ!」 金髪が、竜崎の小さな胸の突起を捻り上げた。竜崎の声は、痛みによるものではなく、明らかに甘い何かを含んでいた。 一声上げる度に、黒すぎる瞳は闇に沈む。自ら上げる鳴き声に、竜崎の精神は1ミクロンずつ殺されていく。 「……!!……………」 相沢の額に脂汗がにじむ。それをぬぐう事もできず、だがなんとか上ずりそうになる声を抑えようと唾を飲んだ。 「悪いが、それはありえない……竜崎がLだったら世界は終わりだ」 「違えねえな!こんな淫乱がLじゃ、解決するのは誰かの下半身ばっかりだ!」 青年達が下卑た哂いを竜崎に浴びせた。竜崎は一言も発しなかった。いや、言葉ともつかない短い甘い音声だけが、 小さく開いた唇から漏れていた。 「じゃあこいつあんたの何。もしかしてマジでナニだったりして?」 刺青が相沢の顔をのぞく。怒りは頂点に達した。 「俺には妻も子もいる!!家族を愛しているし、お前らみたいな趣味はない!!屑が!!」 空気が静まり返る。青年達は誰も哂っていなかった。こういう輩は、自分達への非難は敏感に受け取るのだ。 相沢がそれに気づいた時は既に第二の凶行が始まろうとしていた。 → やっべ長くなる…。そんで酷くなる…; |