本と机しかない我ながら几帳面な部屋に淫猥な水音が響く。

母さんのケーキを食えと僕の性器にクリームをたっぷり塗りつけ、流河に咥えろと命じた。

熱をはらんだ瞳で流河は僕を窺うと、ためらいがちに、だが迷いなく僕のものに細い舌を這わせはじめた。

下から上へクリームを舐めとる。ちろちろと小刻みに舌を震わせ、点々と残ったクリームをたいらげる。冷たい クリームとねっとりした熱い舌の感触が奇妙な感覚の相違を呼び、今まで感じた事のない快感をもたらした。

「ははっ……うまいじゃないか……そんなに美味しいか?味わえよ。もっと、そうお口全体で、そうだ… どこで勉強したんだ?エル!!お兄ちゃんの知らないうちに、どこかの男のあれを咥えてたのか!?悪い子だ…! 悪い子だ!!」

「むぶっ!ぐ、ぐぇ……っ」

流河の髪をつかみ、根元まで口内に押し込む。喉奥を突かれ、嘔吐中枢を刺激された流河がえづく。それでも、 お前の男根は血管を脈打たせながら、いじらしくそそり立っている。
初めての相手が僕で、お前は幸せだよ。当たり前のセックスなんて、お前には似合わない。セックスは酷く扱われる ものだと記憶力の良いお前の体はもう認識してしまっている。

その体のように正直になればいい。
僕を求めているのは、お前だ。

流河が苦しげに解放を求めて肩をよじる。腕は粧裕の制服のリボンで後ろに固く結んだから動かせない。でもね、 本当に嫌ならそうなる前に本気で抗えばよかったんだ。僕らの力は拮抗しているから、相打ちに持ち込めたかもしれない。 まあ、射精を許してあげて力が抜けた時に縛ったんだけれど。

「でも、本気で拒絶されてるとは思えないよね…普通、こんな所舐めろって言われたら死ぬ気で抵抗するよね。 それとも、お前のお得意の計算か?はは、違うよね、お前はこういうのが好きなんだろう?僕無しではもう いられないんだろう?」

げ、げ、とえづく流河の頭を抱えて固定し、僕は無遠慮に腰を揺すった。喉奥のざらめきが亀頭の薄い粘膜を擦り、 僕もああと声を漏らす。どこまで優秀なんだよお前は。体のどこもかしこも気持ちがいい。

「そうだろう、流河!?」

「ぐふぅ、 げ げぇ!!」

腰を突き出し流河の頭を下腹部に押し付けて食道を犯す。反射的に流河は胃に収めた甘味を逆流させた。
げほ、げほと咽る流河を突き飛ばすと、白いシーツは消化を待っていたスポンジやクリームにまみれていった。

「あーあ…何してんだよ。汚いな」

口元がほころぶのを隠せない。

浅い呼吸を繰り返しながら、流河は僕を見た。

「なんだよ」

過剰な戯れに瞳を濡らしながらも、闇色の瞳の奥から気に障る思念を感じる。

「なんだよその目は……そんな眼で見るなよ」

これは、憐れみだ。憐憫の念を込めて僕を見ている。この僕を。

「見るな!!」

僕は流河に跨り、頬を平手で打ちつけた。何度も、何度も。流河の唇が切れ、緋色の鮮血が白い肌をすべる。 僕は夢中でそれに舌を這わせ、唇を吸った。
鉄の味がする。流河の味がする。この感情はなんだ?憎い相手の流す痛みの象徴を徹底的に味わいたい、きっとそうだ。 僕は薄い唇を何度も舌でなぞり、噛み、血の味を飲み込んだ。お前の唇は柔らかいね、硬質な心とは大違いだ。 口内の舌も熱く濡れて、別の生物のように僕の舌にからみつく。

「流河……流河…流河……………」

僕はいつの間にか悪趣味な兄妹ごっこにピリオドを打ち、全身に舌を這わせながらこの体の偽りの名をつぶやいていた。

「あの録画で僕に脅されているからここに来たんじゃないだろう…?こうされたかったんだろう…? なあ、僕に夢中だろうL、そうだろう…はは、はははは、はは……」

胸の小さな桃色を甘噛むと流河が細い喉を反らした。その反応に笑いが止まらない。笑いすぎて涙が出る。 流河の脚を抱え、その胸に膝がつくまで折り曲げると、幾度も貫かれ紅く腫上がった肉孔にまた身を沈めた。 高く上擦った声をあげる流河が愉快で、涙はいつまでも止まらなかった。












「そろそろ迎えが来ます」

夜神は身支度をする私にちらりと視線を送ると、そう、と呟きまた掃除に専念した。シャワーをあびてシーツを洗い乾燥機にかけ、 捨てるものは捨て、制服は翌日仕上げのクリーニング。何もかも計画通りであった様にすべてが私が訪れる前に 戻っていく。

「帰りますね」

「またおいでよ」

夜神は掃除機を止めて微笑した。元通りの美しい笑顔。

「もう来ません」

夜神の表情は変わらなかった。ただ美しく微笑んでいた。そして、そうかじゃあまた大学で、と快活に手を振った。

「夜神くん」

「何?」

「おっしゃる通り私はそんな映像の脅しには乗りません。キラに興味があったから乗ったふりをしていたまでです。 無論あなたと性的関係を結ぶ様になったのは想定外ですが…今日も自らの意志でここに来ました。 お父さんに送りつけてもかまいません」

「………。」

「辛くなったらいつでも自首しなさい。待っています−−−−そうしたら」



私たちは友達になれると思います。


そう言った私を夜神はただ微笑みながら見つめていた。狂気に身を委ねないと己を晒せぬ憐れな少年に背を向けると、 私は親指で夜神に貪られた唇をなぞっていつもの感触に安堵し、精神と体が結合したのを確認した。
もうここには来ない。お互い、ここまで暴きあったのだ。この部屋にもう知りたい事は何もない。

私は廊下に出る前に振り向いてもう一度部屋を見た。
泣き、笑いながら私を蹂躙した男とは思えぬ優しい微笑を口元に湛えた男が居る。



そこは威嚇的な量の書物に囲まれ几帳面に掃除された、
白く四角い、清潔な部屋だった。



end






こんな月感です。なにげにボコリ愛のお題「マウント」を消化。