体が重い。

腰から下に錘をつけられた様だ。

肩が入らずろくに釦を留めていなかったブラウスを腕から抜かれると、その白い布で両腕を頭上で縛られ 何度も奥を突かれた。そして声が嗄れるまで夜神を「兄」と呼ばされ続けた。
こんな年下の、まだ少年といえるこの男の、私が「妹」。悪趣味が過ぎて笑いがこみ上げる。

だが快楽にあえぐ肉の塊となった私は真剣に、時には涙を流しながら夜神を兄と呼び、求めた。

そして仕舞いには自ら腰を振り−−−−−−−

私は瞼を下ろし記憶を辿るのを止めた。自分を取り戻した今、ただの肉でしかなかった先ほどまでの己な ど思い出したくもない。

「目が覚めた?」

誰もが心地よいと感じる音色の声が聞いた。裸でベッドに横たわる私の肩を抱く様に腕を回した夜神月。 穏やかな優しい笑顔がかえって背筋に寒気を感じさせる。

「すみません、私眠ってしまいましたか…」

「眠っていたっていうか、気絶していたっていうかね。すごかったよお前」

黙れ。

「お兄ちゃん気持ちいい、気持ちいいって何度も鳴いて。エルのあそこをぐちゃぐちゃにしてって お願いして。−−−はは。」

懇願したわけではない。そう言えと言われたから言ったまでだ。

「…どうして黙ってるんだよ。なんとか言ったら?」

「楽しそうですね夜神くんは」

「そりゃあね。普段はいやらしい事なんかまるで関心ありませんって顔したお前がこんなに淫乱だなんて、 面白くてたまらないよ。何度でもつつきたくなる」

腹立たしい。自分さえ知らなかった快楽に弱い体が心底疎ましかった。どんなに心を強く保とうとしても、 最後は快楽に精神を侵食される。
精神さえ守れれば、体などくれてやると思ったのに。
浅ましい体を呪いながら、私はのそりと体を起こすと、夜神の瞳を正面から見据えた。

「そうでしょうね。あなたはそういう人だ。」

夜神の片眉がぴくりと動いた。

「穢れを知らない美しい顔をして、何かを穢す事でしか興奮を感じない。あなたはこの温かい家庭が、 家が息苦しくてたまらなかった」

「………。」

「優等生である自分、そこからはみ出る事を許されない自分をどこかで解放しなければ狂気が暴走 しそうになっていた…極端に言えば両親殺害、実妹強姦、何かを壊したくて堪らなかった。だが 破壊によって今の自分まで壊してはならない」

夜神の表情は変わらない。薄い笑顔で私を見ているが、その瞳は笑ってはいなかった。

「そこに現れた都合の良い存在が私です。自分を殺人の容疑者として追う私に情けはいらない。 綺麗な自分を保つ必要もない。私は公衆便所であなたにあんな行為を強要された時、いささか 不思議でした。レイプとはいえあなたはこんな場所を選ぶ人間ではない、むしろ汚いと嫌う種類だろうと。 でもそれは違いました。いえ…汚いと嫌っているから、あの場所を選んだのです」

何も言わぬ夜神から目をそらさず、私は続けた。夜神は相変わらず奇妙な笑顔を湛えていたが、瞳に鋭さが増すのを 私は見逃さなかった。

「汚いと感じる事で清らかな自分を確認する。私を淫乱と蔑み、常軌を逸した行為を強要しそれによって 達する私を見て自分は違うと認識する。踏み躙る事で優越感を満たせるから、穢す行為に興奮を覚える。 あなたは自分を守る為に私を抱いているんです−−−−違いますか」

暴走しているのは私だった。平常を保てずあられもなく抱かれた己に腹を立て、この少年にあたっているのだ。 こんな言い方をすれば夜神の嗜虐心を挑発するだけだ。だが止められない。

「お前は僕を苛立たせる天才だよ」

夜神の唇が左右に大きく伸びる。作りなれた仮面の微笑から、血の通った悪魔の笑顔に変化する。そうだ。 それでいい、夜神月。私はお前と話がしたいのだ。キラとしてのお前と。私は体内を流れる血が熱くなるのを 感じた。

「僕がお前を抱くのは、すました顔のお前が淫らな一面を見せるのが面白いからだよ…まあこの僕がこんな 背徳行為をしているという事に興奮しているのは事実かもしれないが、人はみんなそんな一面を持っている ものだろう?僕にとってはそれもただの退屈しのぎだ。自分の為だなんて、面白い発想をするもんだね」

負けず嫌いの夜神月。多弁な自分に気づかないのは若さ故の青さか。

「そしてあなたは私と友情関係を結びたいとも思っていた」

このプロファイリングデータを話すのは別の機会か、私の胸のうちに留めようと思っていたが、この男から キラを引き出せる可能性を感じる喜びに私の舌は回り続けた。

「あなたがお茶を淹れている時、私はさっさとセックスしましょうという意味合いの事を言いましたね。あなたが寂しそうな 表情をしたのが不思議だった。目的はそれだけでしょうに。ですが一連の流れから私は確信しました。 あなたに友達と呼べる存在はいないのです。」

夜神は机の上の冷え切ったお茶をちらりと眺めた。

「友達が来るというので母親が大層なケーキを焼く。息子が友達など滅多に連れてこない事を意味しています。 勉強でもするしかない殺風景な部屋は誰かを招いた事がある雰囲気をまるで感じません。むしろ人を拒絶しています。 あなたはお茶を淹れながら夢想した。もし私とあなたが容疑者と探偵でなかったら、ただの大学の同級生で、 友達になれたかもしれないと。そしてこんな風に遊びに来たかもしれないと」

もう夜神は笑っていなかった。鋭い眼光を私に向け、回る舌をからみとる様に見つめていた。

「そんなものは幻想です。私はあなたがキラだと思ったから、探偵だから東応大に入学した。この関係以外の 私達など存在しません。なのにあなたは無駄な夢想をする。あなたは寂しいのです。心の深い部分を語り合える友人も居ず、 その寂しさを否定し、自分ほど優れた人間の友人に相応しい者などいないと嘯き、誰よりも優れた存在である為に 犯罪者を世界の汚れとばかりに神の様に消してまわり、救世主と呼ばれて安心する。大量殺人鬼キラとしてのあなたの行動は、 歪んだ自己防衛心が肥大化したものだ」

「夜神くん、あなたはただの18歳の少年です。その年頃の多くの少年がそうである様に、理解者が欲しかった だけな−−−−−−−−−−−−」

言葉は最後まで放てなかった。夜神の拳が私の頬をしたたかに殴りつけた。ゆるく身を起こしていただけの、 力の入らない体が大きく飛びヘッドボードに頭を打ち付ける。一瞬脳震盪を起こし宙を見上げた私の胸を夜神が 押さえつけた。

「意外と暴力的ですね、夜神くんは」

「そうだな、お前に対してはね」

見つめあい、笑いあう。まるで友人の様に。

「面白い勘ぐりだったよL……僕が、優等生である事に疲れているとでも?そんな僕の理解者を欲しているだって? …馬鹿にするなよ。僕がそんな安っぽい人間だっていうのか?」

「そうです」

先ほどとは反対の頬に拳がめり込んだ。今度は予想していた私の足も、夜神の腹を蹴り上げる。 夜神がくぐもった声を漏らし、私は口中に溢れた血を夜神に向けて吐き出した。

そしてお互いに笑う。

夜神にわかるだろうか。友情など我々の間に必要ない。追う者と追われる者、その関係だから私達は今笑っている。 今、お前の一番の理解者は私なのだ。美しいだけではないお前を認め、負の部分で対話する。お前の望んでいる 関係を私達は結んでいるのだ。私がお前を捕らえるまでの、つかの間の関係と思っているからこそ、お前は こんなにも濃厚で異常な行為に夢中になっているのではないのか?

私の肩を押さえつける夜神の指に痛みを感じるほど力が入る。

「僕はキラじゃない。優秀な自分に満足もしているし友達もいる。お前の言う事はまるではずれだ…だけど、そんなに僕に 友人と思ってほしいなら、友人として扱ってやるよ」

夜神の指が下肢に伸びた。脚の付け根の薄い皮膚を撫でられ、息を詰めた私を見て夜神が目を細める。

「流河はいやらしい事が大好きだもんね。ほら、僕が触ると簡単に動けなくなる」

「…夜神くんは友人にこんな事をするのですか?」

「お前という友人がしてほしいって言うからしてやってるんだ」

「そんな事…言ってませっ……私が、言いたいのはっ……」

すぐに熱くなる下半身を切り捨ててしまいたい。

「そうそう、母さんがお前の為に焼いたケーキだ。食べてくれよ。甘いものが好きなんだろう?」

後孔に冷たい感触が走る。片足を夜神の肩に抱え上げられ、閉じた蕾に何かを押し込まれる。

「小ぶりだけど実のしまった甘い苺だよ…ほら、美味しそうに食べるねお前の口は。もうひとつどう?」

「んぅ、あ……!夜神くん、やめっ………」

固めの果実が細い指に押されて体内を進む。冷たい異物感に悪寒が走り、私はシーツを握り締めた。

「やめてやめてって、流河は嘘つきだね。大丈夫、親友の僕はお前の事がなんでもわかるから。もうひとつ 欲しいんだよね?もっともっと欲しいんだよね?」

「………うっ………うぅ…………」

ひとつ、ふたつ。こんなもの、欲しくなんかない。”私”がいくら訴えても、刺激を覚えた体は夜神を拒絶せず、 新たな刺激を貪ろうとしていた。

「凄いね、4つも入った…まだ入るかな?」

「もう、もう無理です!本当にやめてくださっ…  −−−−−−−!!!」

夜神の長い指が体内で蠢き中の果実を掻きまわす。固い実がごりごりと動いて粘膜を刺激し、感じたことのない刺激に 腰が震えた。

嫌なのに。本当に嫌なのに。だが”私”をあざ笑う様に、淫らな中心部が首をもたげる。嫌だ。嫌だ。 また、”私”が消えてしまう。私は立ち去ろうとする自分の影をつかもうと空に手をのばしたが、夜神に その手首を掴まれ影をとり逃した。

「はは。勃ってきたね。ねえ、嘘つきの流河。小難しい顔してあんな長い話をして、つまりはそういう事にしておいて お前は僕に抱かれたいんだよ」

「うぁあ!!あぁ!あはっ……」

双球を寄せて揉みしだかれると、果実が密着感を増し、より腸壁を強く刺激した。

「また大きくなった…!お前本当の変態だね、こんなもの入れられて、ちょっと押されてるだけで だらだら 汁を垂らしてさ…ああ、少し潰れたかな?お尻から紅いジュースが零れてきた…」

浮かれた声で夜神が私に囁く。私が脳内に図を描いているのがわかっているのだろう。意識せずとも私は 言葉から絵図を想像してしまう。夜神の言葉の一言一言に、自分の性器が反応を示しているのがわかる。

「だらしのない口だな流河のここは。折角の苺が…」

「ひっ……や、夜神くん、夜神くん!!」

後孔に温かく柔らかいものを感じた。ぬるりと侵入するそれは、夜神の舌だ。ぴちゃぴちゃと音を立てながら つぶれた果実の汁を舐めとっている。時折ずる、と奥に侵入すると、脳の裏側にむず痒い感覚が走った。

「や、が……あぁ!!き、汚い、やめて下さい!!やめっ……あ、ああ!!」

自分のどこからこんな声が出るのか。艶を孕んだ、男の不気味な嬌声に耳を塞ぎたくなる。

「汚いだって?そうさ、僕は汚い事が好きなんだろう?汚い事をされて感じるお前を見て、自分は違うと 安心するんだって?…ふざけるなよ」

中を掻きまわされただけで達しそうになっていた性器の根元を強く握られる。

「あー……っうぅ、−−−−−!!」

「お前を抱かせてください安心させて下さいとでも言うと思ったのか?お前は僕に抱いてもらう理由づけを したかっただけだ。自分から抱いてほしいと言いたくないから、理屈をこねて僕を侮辱して…! こんないやらしい体をしてるくせに、こんな所に入れられて感じて泣いてよがるくせに、それを僕のせいに するなんてな!!」

「いっあぁああ!!はっ…う、う、−−−−ぐ……!!」
熱く猛った夜神の性器が私の直腸へ潜り込んだ。中の小さな果実が最奥へ到達し、もはやそこは快感など 感じない。苦しい。吐き気がする。球状の異物感が形をぐにゃりと変えていく。
夜神のものに内部を突かれ、苺が潰れたのだ。夜神が動く度にそれは潰され液状になり、動きに合わせて何度も ぶちゅりと派手な音をたてた。

「いい、気持ちいいよ…!!なんだろこれ、ざらざらして…苺の種かな?ねえ、お前もわかるかい?」

「ああぁ…あー……いっいっ、…嫌だ………っ」

「また嘘がはじまった、わかったよいいんだね?苺の種にこすられて、感じてるんだね?」

とても小さな粒状のものが内部を擦る。沢山の粒が予測できない位置に貼りつき、感じる粘膜を微細に刺激する。 どこだ。”私”はどこにいる?気持ちがいい。ひどく気持ちがいい。瞼の奥に星が瞬く。

「や、やがみくっ……そこ、放して、くださいっ……も、もうっ……」

私は性器の根元を押さえる夜神に懇願した。

いや、もうこれは私ではない。ただの肉だ。

「ははっ…イキたい…?駄目だよ、これは嘘ばかりついて僕を侮辱したお仕置きだ…ねえ、すごいよ僕が動く 度にお前のお尻から紅い液体がじゅるじゅる零れて、処女とやってるみたいだ。流河ねえ流河、もう一度 お兄ちゃんって言ってみて…!」

「お兄ちゃん、お願いしますっ…もう、イかせて… イかせて………!!」

肉はあっさりと屈辱の言葉を口にした。

「駄目って言ってるだろ?そんな簡単にイきたいなんて言うはしたない子だったかな?エルは。 行儀が悪いな…じゃあ、ちょっと粗相しない様縛っておこうか」

「や…ーーーーー!!あ、ああーーーーー!!」

制服の紅色のリボンで肉の性器の根元をきつく縛る。肉は苦しそうに嫌々と首を振り続け、頬を涙が伝った。 前への刺激は施されないが後ろは抉られ続け、背筋を甘い疼きが駆け上がるとびくびくと腹筋が震える。

「エルの中、今きゅっと締まったよ、中でイったんだろ?腸壁がこんなに痙攣して、こんなとこ縛られてるのに 勃起して…なあ、お前はいやらしい変態行為が大好きなんだよ。…この淫乱がっ……!!」

淫乱。そうかもしれない。

脳に瞬く星を見る為なら、今なら何でもできる。何でも言える。

肉は年下の少年を兄と呼び、射精の許可を得ようと嗚咽しながら許しを請う。

もしかしたら本当に自分は抱かれる為にこの部屋を訪れたのだろうか。

だが今はそんな事は考えられない。肉は煌めきだした星をただ瞼の裏に感じていた。





Lのプロファイリング?に自分がわけわかんなくなって
疲れました…てか、まだおにいちゃーんかよ すみません