縮んでいた流河の性器は、内側を弄くられているうちにゆっくり首をもたげ始めた。 だが僕はそれには触れず、授業を進める。 『前立腺というのは膀胱の下、足の付け根あたりにあるクルミ大の器官で』 教え込む様にしこりを指の腹で押し撫で回す。流河の陰茎に血液が集まり、脈打ち始める。 『中には尿道が通っており、役割についてはまだよくわかっていない部分も多いが、 前立腺液の分泌が主な働きだ。精嚢から分泌された精嚢液を精巣で作られた精子と混合し精液を作り、 射精における収縮や、尿の排泄も担っている。』 教科書通りの即物的な単語を交えながら、僕は丁寧に解説した。 言葉で流河の体が反応するのはもうわかっている。ほら、眼の縁を朱らめて呼吸を更に乱し始めた。 快感を得るのに不可欠な器官を苛められていると知り、お前の脳はここと快感を深く関連づけただろう。 内部の粘膜が快楽を求めて収縮し、僕の指をより咥え込む。自らの体内の変化に流河は眼を見開き、 荒れた呼吸にこらえきれず、酸素を求めて唇をほどいた。 『前立腺を刺激すると、射精の感覚に似た、それは心地よい感覚が生ずる。そうだろう?』 はあはあと熱い吐息を漏らしながら、流河が小さくかぶりを振る。そんな潤んだ瞳のくせに、 強情を張る流河がたまらなく可愛らしい。本当にお前は、虐め甲斐があるよ。 『では前立腺DRY反応とは何か。普通男性は射精すると虚無感に襲われ、射精までの快感や充実感は 吹き飛んでしまう』 そこを刺激する動きを早めると、流河の息が犬の様に短く吐き出される。はっはっと漏れる吐息は動物的で、 流河を人間から獣へ貶めた事を意味していた。快楽を求めて自ら内部をくねらせる淫獣。 それが今の流河の姿。 僕は指の腹を叩きつける様に肉壁の粘膜を刺激した。 「………………!!はぁっ………は……っ!」 より呼吸を荒げ、びくびく全身を震わせると、流河の体が前のめりに傾いた。開いた唇から涎が滴り、ノートに染みを作る。 どうやら、解説中のドライ反応を体感中のご様子だ。 机に顎をつけんばかりの姿勢になり、僕のノートは流河の目の前に広り、その視覚は僕の綴る文字だけを捉える事となった。 『だが前立腺刺激で得られる快感は無射精の為、だからあのエクスタシーが幾度も訪れる。 全身がほどよい痺れに包まれ、人によっては痙攣反応が生じる程の快感となる』 お前のようにね。 たった今体内で達したばかりの流河は、また小刻みに震えだした。 『脚部、腰、下半身、感度の高い人は全身で感じる、終わりの無い至福の快感、それがドライ反応である』 潤んだ瞳に僕の文章はどう映っていただろう。硬く律した性器に触れる事なく、射精もなく達した自分を どう思っているだろう。そして、−−−まただらしなく高まる性感に、この気丈な精神は何を感じているだろう。 流河が唇を噛み、まだ痙攣する指でペンをとった。 震えて判読しずらい文字らしきものを綴ると、また唇を開き、甘くせつなげに息を漏らし、何かに耐える様に 膝を抱えた。 『おまえにかならず』『てじょうをかける日がくる』 『ゆるさない やがみ月』 『ゆ る さ な い』 ああ。 僕を喜ばせる文字が躍る。怒りで理性を保とうとしつつも、いやらしい自分に傷つき、更に快楽を求める己に怯え、震える文字が。 『そんなに気持ちがいいですか?』 流河の真似をして敬語で書いてみる。今、僕は先生なわけだし。 流河はふるふると首を振った。もう頬は真っ赤だ。 『質問に正しく答えてください。気持ちがいいですか?』 流河は何も答えない。ペンを摘まんだまま手はだらりとノートの上に置かれている。 僕は更にその淫らな内臓を掻き回した。 「−−−−−−−−−−−−−!!」 激しい動きに思わず流河がペンを落とす。2本の指を前後左右にばらばらに動かし、また前立腺を叩きあげた。 もう流河の唇は閉じる事なく、こぼれた涎は唇からノートまでつながっていた。 『質問です。気持ちがいいですか? Yes No』 我ながら優しいな僕は。最大の妥協だ。明確に文字にするのが嫌ならば、これなら○をつけるだけで答えられる。 僕は前立腺への刺激は続けながら、薬指も後孔にあてがった。感じすぎている流河は気づかない。 そのまま僕は3本目の指を挿入した。流河は「ひっ」と喉を鳴らすと、一瞬どこか遠くを見つめた後、また ノートに視線をおとした。 3本目は、十分に解された肉孔に簡単に吸い込まれた。 内部はもう溶ろけそうに熱い。 流河の体がまたぶるぶると震え始める。 ほら、終わりの無い快感の頂点がまたやってくるよ。 その時ノートにぱたぱたと水滴が滴った。 瞬きを忘れ、乾きを察して瞳に膜を張っていた涙が、 ぱたぱたと。 ノートの上に転がったペンを、震える白い指で流河が摘まむ。 そして単語の上にぎこちなく小さな円を書いた。 ”Yes ” 正解のご褒美は2度目のドライ。 学習能力の高い流河の体は、全身を震わせた後も、もっともっとと腸内を蠢かせ、肉孔はひくついた。 そんなに傷ついた目をしなくてもいいのにね。誰だって感じると言ってやったのに。 まあ、たしかにお前はこっちが恥ずかしいくらい反応が過敏ではあるけれど。それを観賞するのが 僕の楽しみではあるが、さすがに指が疲れてきてしまったから。 ずる、と指を抜き、僕はペンケースから蛍光ペンを取り出した。指を抜かれた瞬間の素っ頓狂な顔も見ものだったけど、 ペンをしげしげと眺める僕の行動を察知した時の表情は、恐怖の色を滲ませてそれはそれは僕を喜ばせた。 もう我慢できない、と流河は急いでジーンズを引き上げようとしたが、自分の昂ぶった性器が邪魔をする。 わずかな衣擦れがそこを刺激したのだろう、肩をびくつかせて固く目をつぶった。 その瞬間に僕は、刺激を求めてひくつく淫らな穴に蛍光ペンを挿入した。 閉じた目が見開かれる。自分に突き刺さった半透明の異物を見つめている。僕はそれを更に奥まで押し込み、 また腹の内側へ向けて揺らしてやる。さあ、3度目だ。いくらでもイケよ。 『こんなの入れられて感じちゃうなんて、流河も十分変態だね』 ああ、文字で苛めるのも忘れずに。 終業のベルが鳴る。膝を抱えて、全身を戦慄かせ机に額をあずけている流河に、前に座っていた女子生徒が心配そうに声をかけていた。 「流河くん、大丈夫…?なんだかずっと具合が悪そうだったけど」 「え…」 わずかに流河が顔をあげる。 「だって、ずっとはぁはぁしてたでしょ。時々喘いでたからよっぽど苦しかったのかなあって」 「…!…」 苦しかったんじゃない、気持ちよかったんだよ。 僕はわざとらしく流河の肩を抱き、顔を寄せた。 「聞いたかい流河…。お前我慢してたみたいだけど、周りに丸わかりだったみたいだね」 流河がうんざりした顔で僕を睨んだ。 「そうですね、具合が悪いとバレバレだった様ですね……」 そううまく切り抜けると、流河は立ち上がろうとしたがバランスを崩しよろめいた。僕は肩を支えて流河を立たせると、 保健室で休ませてくるよ、と女子生徒に笑みを送った。 「夜神くんの自己プロデュース能力の高さには感心します」 息を整えながら流河が憎まれ口をたたく。 「僕はお前の感度の高さに感心するよ」 「……あなたの非道っぷりには驚嘆するばかりです」 ああ言えばこう言う。全く、感じてる時以外は可愛くないね。 まあ、だから面白いんだけどね。 「…保健室に先生はいるだろうし、どこかの空き教室の方が休めるんじゃない、流河?」 流河に皮肉られた自己プロデュース能力を最大限に発揮し、最高の微笑を流河に向ける。 流河は瞳を半眼にして僕を睨み、小さな声で、休ませる気なんかないんでしょう、と呟いた。 それからは空いていた理化学実験室で、夜まで。 散々にほぐされたそこは僕を歓喜して受けいれた。本人はいやだいやだとわめいていたけれど。 嫌というほど学習した快感の扉を僕のものでノックする度に、びくびくと流河の内腿が痙攣する。ほら、扉が開く。こっちへおいで流河。こっちは海だ。 天才的に性に貪欲な体を持つお前を、色欲という海が待っているよ。存分に溺れるがいい。 前立腺は射精と排尿をうながす器官でもある。 もっと仕込めば、強制射精や強制排尿も可能になるだろう。 その時のお前の顔を想像するだけで、達しそうだ。 恋かと錯覚しそうにお前に夢中だ。楽しいよ流河。楽しいよ、L。 僕は何度目かの白濁を流河の中に吐き出すと、持ち出してきたバーナーでノートを燃やした。 流河は感情のこもらない瞳で炎を眺めていた。瞳の中に炎が映る。 僕が憎いかい? いつかまた、聞いてみよう。 答えを聞いた僕が書くのは、Yes No ではなく、お前の名前。 死神がくれた黒い表紙の、あのノートに。 愛しい人の名を綴る様に、大切に一文字一文字、心をこめて。 僕の退屈を埋めてくれる、お前は唯一の人間だから。 篭った空気を入れかえようと窓を開けると、 縮れた炭と化したノートはぱらぱらと教室内に散らばり、 冷えて埃と同化していった。 end 前立腺の講義でした(笑。 文字で辱めるというのがテーマだったんですが、 すっかり前立腺がテーマに…まあ、いいか。 月の前立腺講義はウィキと、前立腺マッサージの 妖しいお店の宣伝文句を一部改変し引用させていただきました。 私もお勉強になりましたー |