涼しい顔して泥酔状態の竜崎をベッドに放り込む。
性懲りもなく、もぞもぞとジーンズを脱ごうとしている竜崎に半ばあきれ、水をくんできてやろうと思ったが、 竜崎はもうベッドから動く気はないらしく、脱いだシャツが真ん中でたわんだ鎖を引っ張っても、相手の重さを感じるだけだった。
やれやれ、と僕はベッドの縁に腰をかける。危なかった。もし、あのままジーンズが下げられてしまったら。
僕は何をするかわからないよ竜崎。
甘い香りのする探偵に、こんなにも焦がれている僕が。

「らいとくん」
舌ったらずなリズムで竜崎が僕を呼んだ。
「…何?」
「うまくぬげません。ぬがせてくらさい」

意味を租借するのに数秒かかった。
酔っているのだ。正気じゃない。明日になれば覚えていないかもしれない。様々な、都合のいい考えが脳裏を駆け抜ける。 いや、正気じゃない相手にこれ幸いと手を出す僕ではない。
…でも。でも。でも。

「じゃ、じゃあ竜崎、はずすからね」

脱がせろと言われているんだ、仕方がないだろう!!
僕は弾む息を抑えながら、ジーンズのボタンをはずそうとした。緊張と期待でうまくいかない。
だがなんとかボタンを解放すると、おそるおそるジッパーを下ろした。


僕は馬鹿みたいに口をぽかんと開き、そこに息づく「もの」と竜崎の顔を見比べた。

こ…こいつ   勃ってる ………!!

「ああ…すみまふぇんね、お酒を飲むと時々こうなってひまいまして」
「そ…そう…」
「処理しまふから 手伝ってくらさいませんか、らいトくん  手がうまくうごきません」

何を言ってるのかわかってるのだろうか。

でも。

  お願いされてるんだ、  仕方がないだろう!!





「あっあ…らい…とくん、いいです、上手です…」
「お褒めにあずかり光栄って言っていいのかな…」
昨日までの僕からすると、これは、感動的な事態なのだが。
僕はベッドのヘッドボードに背中をあずけ、膝を開いて竜崎を後ろからその間に座らせ、股間に手をまわし、彼の性器が絶頂に達する手伝いをしている。
竜崎は頭を僕の肩にあずけ、瞼を閉じて、先ほど蜜を吸いあった唇からは甘い吐息を漏らし、エナメルの小さな歯が切なげに 右人差し指を咥えていた。

すごく嬉しいし、幸せだし、感動している、が………
…こういう流れは僕の理想とは違う…。
もっとちゃんと、告白して了承を得て、気障なくらいムードを作り…!

「そ、そこ…そこ、もっとこすってください…気持ち、いいで、す…」

でも。所詮僕もただの男という事か。好きな人の乱れる姿を目の当たりにして、ただ黙って見ていられるわけはなかった。

「ここって、どこ?竜崎、教えてよ…」
「こ…ここです…この、先…」
はあはあ肩で息をしながら、白い指が自分の張り出した先端をつついた。
「ここ、ね…」
「ふっ…!ふあ、あ、うふぁ…!」
甘ったるい声で竜崎が喘いだ。こういう声を出すんだ。20代にしては少年めいた声は、少しうわずり、 やや高めに掠れた音色が僕の欲望を刺激した。もう、どうにでもなれ。僕も酔っているんだ。お前にね。

「ん…く、くすぐった…いれすよ…」
一度摘んでみたかった薄紅の胸の蕾をそっと指の腹でさすると、びくりと竜崎は首を縮こませた。
それでも執拗にそこを摘まみ上げ、つぶす。突起は膨らみ、紅さを増した。
「くすぐったいだけ?気持ちいいんじゃないの?」
「は、はい、実は… あぁ…」
やっぱり。酒で濡れていた唇は、涎でぬらりと光っている。それこそ甘い酒だ。僕は竜崎の小さな顎をつかむと 夢中で唇をむさぼった。竜崎も舌をからめて答えてくる。僕は唇の輪郭を舌でなぞり、普段は見開かれている 黒い瞳を覆う瞼に口付けした。

「はあっ!!」

竜崎の体が硬直する。僕の腿にだらりと置かれていた指が、肉にくいこんだ。
「りゅ、竜崎?」
「そ、そこはやめてください…」
「ここ、弱いの?」
また瞼に舌をのばすと、更にぎゅっと硬く瞼を閉じた。そんな事したら、ほら。僕にどうぞと言ってるようなものじゃないか。

「やあ!めっ…て、くだ、さ…   や 、 だ…」

瞼が感じるんだ。目が大きい分、皮膚が薄いんだろうか。キスも、裸になるのも、股間を弄ばせるのも平気な顔していたくせに、瞼は恥ずかしいんだ? やっぱりお前は変わってるよ。

でも恥じらう竜崎はやけに可愛らしく、僕に意地悪な感情をむくむくと湧き上がらせた。いつもは目が合った人間の 息の根を止めてしまう様な瞳をした お前が、その瞳を覆う敏感な皮膚のせいで顔を赤らめ、いやいやをする様に首を振っているなんて。さっきまでの乱れ方もぞくぞくしたけど、この方がいい。好きな子を虐めたくなる なんて子供じみていると思っていたが、僕にもそんな欲望があったなんて。
僕は竜崎の大きな眼球を瞼の上から、舌の先で小刻みにつついてぐるりと輪郭をなぞりあげた。ぁぁ、ぁぁ、と竜崎は 恥ずかしそうに小さく上ずった声をあげる。
「ほ、ほんと嫌…嫌ですって、ば… あ、あ、 あ」
竜崎が僕を振りほどこうと腕に力を入れた時、僕は左手で白い肌を飾る乳首を強めに捻り、右手で透明な液をとろとろ 垂らしている性器の先端を同時に攻めたてた。 無論、竜崎が嫌がる瞼に舌をすべらせながら。
「−−−−−−−…!!だ、駄目です…だ、だめ…ふ、んん!
…はっ………!!!」
竜崎の頭が仰け反り、僕の肩に押し付けられる。陰茎はびくりと脈打ち、青白い腹にどくどくと熱い性を放った。



しばらく僕に体をあずけたまま、荒い息を吐いていた竜崎が呼吸を整えると、黒すぎる瞳をぱちりと開いた。
「眠くなりました」
「ええ!?」
「おやふみなひゃい らいとくん」
竜崎は猫のように大きくあくびをすると、前のめりになってそのまま膝を抱え、ベッドに横に倒れたかと思うと、また瞼を閉じた。

後に残されたのは、猛りきった僕の中心。

な…。なんだよ…!!

結局僕はこの酔っ払いに振り回されたというわけか。
僕は溜息をつき、小さな寝息をたてる竜崎を眺める。瞼を閉じていると、結構整った顔立ちをしている事に気づく。
艶のある黒髪を撫でながら、もう一度薄い瞼にキスをした。


「好きだよ」





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「おはようございます、月くん」
「う!!」
朝の挨拶と共に、強烈な痛みが顎を襲った。

「竜崎、朝の挨拶に回し蹴りは乱暴すぎないか!?」
「私が嫌がるのに変態行為を強行するからです」

は、はは…。僕が、変態…?瞼を舐める事が?

どっちが変態だよ!!

そう叫ぼうとして、僕は重大な事に気がついた。
竜崎は、昨日の事を覚えている!!
心の中に大量の汗をかいていると、竜崎はいらいらと爪を噛んだ。
「…眠る直前の記憶はあるのですが…私、酒を飲んでいる時皆さんに何かしませんでした?」
え。
「竜崎、昨日のこと覚えてないのか?」
じろりと僕を睨む。
「だから眠る直前の事は覚えていますよ。
すみませんでした、はしたないお願いを聞いて下さって。
酔っていたんです忘れてください」

よ、よかった…。竜崎は己の酒乱っぷりを知らないのだ。皆を甘い唇の虜にした事実など、竜崎の中には存在しない。 一体今まで何人がその唇の味を知っているのかと考えると、腸が煮えくり返りそうになったが、 こいつの中で何事もなかったことになっているのなら、まあぎりぎり良しとする。
いつか僕の唇がはじめてだと認識する日が来れば…て…僕は何を考えているんだ……
そもそもこいつにだって彼女のひとりやふたり、いたかもしれないじゃないか…まるで想像できないけど……
でもとにかく僕の指に乱れた事は覚えているなんて、どうしよう、嬉しいじゃないか!

ぐるぐると、およそ僕らしくないろくでもない事に僕が頭を使っていることを知りもせずに、竜崎は頭を掻いた。
「ワタリからあまり酒は飲むなと言われているのです。失礼をしていなければいいのですが」
「竜崎、その、昨日は」
僕は痛む顎をさすりながら言いかけたが、不機嫌に爪を噛む竜崎を見ると、奇妙に意地悪な考えが頭に広がった。

「昨日は かわいかったよ …おもしろい所、感じるんだね」

言い終わると同時に頬にとび蹴りを食らう。
はは、これが照れた時のお前の態度か。しまった、かわいい。本当にかわいい。

「月くんはまだ酔ってますね」
本気で機嫌が悪そうな、低い声で竜崎が言う。 そうだよ竜崎。泥酔しているのは僕だ。お前という高級な美酒に。


僕は馬鹿みたいに笑いながら、鎖を引いて竜崎を抱き寄せた。うんざりした表情を楽しんでいると、ぐるりと体を捻って 僕の腕を抜け出した竜崎から 3度目の蹴りが飛んできた。


end


冗談です。
白月のかわいさと潜んだ黒さが好きです。
竜崎、サクランボの枝結びなんてキス巧いんじゃね?的ありがち妄想。
で本部の皆がめろめろな所を見てみたくて夢想。
竜崎は酒は強いけど酒乱だといいなあ、という空想。
恥ずかしい所も普通とポイントがずれてると
竜崎らしいなあ、という想像。
でも酒に弱い竜崎も楽しいよね!色々妄想ひろがるね!
だけど私的に、月が酒に弱いのは鉄板です。
この後「いくらなんでも3度はないだろう!」と
殴り愛に発展するのだと思います。平和。



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ちなみに「キッスは目にして」という昔の歌があるんですが
歌詞が猛烈に月Lくさいです。「ひとときだけに切なく燃える」とか
「予言の書とかどうでもいいわ」とか
そのものズバリだったりすごいです ぜひこちら から
歌詞を読んでみてください すごいよ!!
どうでもいけど私はガラスの仮面でこの歌を知りました