◆魅上×L◆ 4年程前に建てられた白い壁のマンションは奇妙な程に特徴がなく、北向きの為白い壁もくすんで見えた。誰の目にも留まらない、独身者か新婚向けの2DKマンション。神には相応しくないと最初は思ったが、「あれ」にはお似合いだ。惨めな程平凡なこの白い檻は、訪れる度に今の「あれ」が置かれている立場を物語っているように思えて愉悦を覚える。 「どうだ?お利巧に待っていたか?」 まだ夕方ではあるが、遮光カーテンにさえぎられた部屋にはほぼ光は届かず、薄暗い闇の中でわずかに動いた人影は返事を拒んでいた。 −−−−−こいつはあきらめが悪いんだよ。 数日前、数分この部屋で顔をあわせた神の言葉を思い出す。 −−−−−こいつは僕の玩具だ。破損しなければ何をしてもいい。僕はしばらくここに顔を出せなくなるから、魅上。お前がこれで遊んでくれ。名前は、 「おい。」 キッチンの隅にうずくまっていた人影は、びくりと背中を震わせ、手首の鎖をじゃらりと鳴らした。 「聴こえているだろう。お帰りなさいませ、魅上様、だ」 ダウンライトの灯りを極小に燈すと、「 あれ 」のやつれた面が浮かび上がった。成る程、4年も神の玩具として扱われているにしては瞳は力を失っていない。 生意気な。 玄関横の小さなスイッチを押すと、神が天井に取り付けたらしいレール式の器具に繋がれた鎖がじゃらじゃらと上へ巻き上がる。鎖に繋がれた玩具の腕はみるみるうちに持ち上げられ、裸の白い胸を私の前に曝け出した。 「どうした。…震えているじゃないか」 全裸の肉玩具は唇を血が滲む程噛み締めて全身を戦慄かせていた。空調のスイッチは入れてある。寒いはずはない。それでも、玩具は冷汗を流しながら震えて私を睨む。−−−そうか。そうだったな。 「これでは排尿できずに苦しかったか?」 「!!!」 刺激に体を緊張させ、噛み締めた玩具の唇が切れた。 面白半分にこいつの尿道に仕込んだ風呂栓のチェーン。 破損させるな、という神の仰せに従い、チェーンは入念に消毒し、連なる小さな銀色の球を一粒一粒尿道に埋め込んでいったものだ。それを三粒程引き出してみたら、この反応だ。 「なんとか言ったらどうだ…?溜め込んでいるだろう?」 ツツ、とチェーンの先を引っ張ると、開いた桃色の先口からまたくぽりと銀色の球が顔を出す。 「ッーーー……!!」 玩具は青白い喉を仰け反らせ、息を飲み込んだ。 そのわずかに朱に染めた目尻に気づき、吐き気がした。 こいつは、尿道もかなり調教されている。 その証拠に、今の刺激でペニスはひくりと膨張を始めていた。 私はこの数日で様々な行為を試したが、玩具は最初は嫌がるそぶりを見せ、最後にはいつも鳴きよがりながら果てた。 汚らわしい。 こいつは、神の生贄。もはや人間ではない。 なのに何故、憐れむような瞳で私を見る? 「この肉玩具が…………!!」 「−−−−−−−−ィッ ぁ゙あ !!!」 ずるりと10cm程一気にチェーンを引き出すと、遂に玩具の唇が解けた。 「そうだ…玩具は玩具らしく、よがっていればいいんだ。神に…神の代理である私に体を扱われ、嫌々な態度をとるとは…神への冒涜だ!!」 「ぐっ−−−−−−−−−うぅ、 あ、ヒィッ…………−−−−−−−!!!!」 ぷく、ぷく、と顔を出す銀の球はまるで尿道からの産卵じみていた。小さな金属球は一粒が前立腺を通る度に 強烈な快感を与え、同時にこぽこぽと尿道を通ると摺れたような痛みを感じるのだろう、甘い疼きと耐え切れない 痛みに混乱するのか、玩具は狂った様に黒髪をぱさぱさと左右に揺らした。 1mはあるチェーンの相当量を埋め込んだのだ。まだまだ遊んでやれる。この様子は小型カメラで神の携帯電話へ映像を送信できるようになっていた。これをご覧になる神もご満足の事だろう。膀胱へたまったチェーンのせいで玩具の体は尿意を延々と催しているはずだが、玩具は身を震わせ、ひたすらに堪えていた。チェーンが邪魔なのは確かだが、わずかな隙間から排尿は可能だ。こいつが堪えている、その理由は、トイレに届かない距離に細工したこの鎖のせい。粗相を拒むプライドがこいつにはまだ残っているのだ。 一度唇を解けば、娼婦のような卑しい声をあげるくせに。 自分は人ではない、玩具なのだとこの痩せた男に覚えさせなくてはいけない。 人として扱われる事などもうないのだと、体に叩き込まなくては。 きっと神もお喜びになる。 「………、なんですか、…それは………」 疲れた声で玩具が口を開いた。久々に言葉を放ったからか、この数日鳴かせすぎているせいか、かなり声は掠れている。 私が鞄から取り出したのは、昨夜ネットで調べて作った発電装置だ。 私は無言で電極を玩具の亀頭から垂れ下がるチェーンに繋いだ。喋った時点で解っていたのだろう、玩具は腕を上空に向け拘束された体を緊張させ、瞬きもせず自身の先端を見つめていた。 わずかに呼気が荒い。あんなに尿意に震えていた体を身じろぎもせず、ただそこを凝視している。 「神を軽んじる罰だ」 「−−−−−−−−−−−−−−−_______________ !!!!」 スイッチを入れると、玩具の白い体が跳ねとんだ。 玩具らしい声もショックに弾けて出てこない。 これでは神もつまらないのではないか? 「少し強すぎたな……」 「ヒッ い゙っ い゙っ い゙っ イ゙ィ !!!!」 断続的な電気刺激に合わせ、玩具の唇から強制的に声を吐き出させる。体の拒否反射であがる声はまるで奇妙な唄のようだ。 電流が流れる度にペニスはビク、ビク、と上下に痙攣する。 「まるで踊りだな…………踊れ!!神の為に、もっと踊れ!!踊れ、この肉玩具が!!」 「ア゙、あ゙ 、あがっ……………ぎ、い、 ィイ゙ ッ………!!!!」 玩具は歯を食いしばって声を殺そうとするが、電流による刺激に逆らう事は不可能だった。ペニスは強制的に怒張し、いやらしく血管をどくどくと脈打たせながらビクビクと跳ね、踊り続けた。 「どうだ?こんな事をされて気持ちがいいだろう、汚らしいマゾヒストが……!!言え!もっとして欲しいと言ってみろ!」 「う、 う、 ゔぅ !!」 見開かれた黒い瞳から生理的な涙が伝う。わかっている、気持ちがいいはずがない。これは苦痛を与える機械だ。 稀にサディストやマゾヒストの世界でプレイとして行われるらしいが、それは苦痛を楽しむ変態行為であり、真の性的快楽ではない。こいつもそこまでの行為を楽しめる程に堕ちてはいない。 だが、それでも気持ちがいいと言わせる事に意味があるのだ。 神が気持ちいいと言えとおっしゃるなら言う。 玩具とは、そういうものだ。 玩具は、天から吊るされた鎖を固く握り締め、全身から汗を噴出してリズミカルにペニスと腹を揺らめかせた。喉を向き、床についた膝をがくがくと震わせる。 「 ……おい−−− 」。 玩具の名を呼びかけて、躊躇った。 玩具の名。確かに神はあの名を告げた。まさか、戯れに神が同じ名をつけたのだろう。本物のはずはない。 本物は時折今もメディアを騒がせている。こんな所で鎖に繋がれているはずがない。だが、もしこれが、あの本物であったなら。 私は自身の下半身を晒すと、玩具に向かって性器を扱きはじめた。電流の操作は怠らない。電気の流れる速度を速めてやる。 「ッ!!ッ!!ッ!!ゔぁ、ア゙、ア゙、ア゙、ア゙、ア゙、ア゙、−−−−−−−−−−−!!!!あぁっ…………!!!」 ペニスは電流に合わせて、人間にはできない短い痙攣運動を繰り返した。そして一度大きくしならせると、鉄の球を押しのけながら白濁をびゅくびゅくと自分の顔に向けて撒き散らした。同時に私の脳の裏側にも火花が散る。 ああ。神。神。神。神。神。神!! 貴方もこうしてこの玩具をご自身のもので清めましたか。 私の神。美しい神。 私は貴方の代わりを立派に勤めているでしょうか? 神の優しい笑顔が脳裏に浮かんだ。私はそれを瞼に焼き付けながら、玩具に向かって粘る性を放った。 「さあ、言うんだ、気持ちいいです、魅上様と---- …………?」 がくりとうな垂れた玩具の顔を覗き込むと、白目を向いて失神していた。つまらない。最後のフィナーレとなる台詞がなければ神も残念に思うだろうに。 「………おや」 玩具のペニスから、ちろりと金色の液体が染み出ていた。失神によりやっと膀胱が緩んだか。 私はチェーンをずるりと引き出した。 「ヒイイイイイ!!!アア゙−−−−−−−−−−!!」 目覚めよ。今からお前は人間である事を否定する液体を放つのだ。 キュル、キュル、と金属音をたてながらちいさな鉄球たちが亀頭からくぷくぷ顔を出す。玩具はその度にびく、びく、とのけぞりながらちろちろと尿を垂らした。もっと、もっとだ。もっと神を楽しませなければ。一気にチェーンを引きずり出すと、玩具は声も出せず喉を引き攣らせた。 ぱっくりと口を開けた先端からじょろっと大量の尿が流れ出る。玩具は尿道を通る液体にさえも感じているのか、涎で唇を濡らしながらも固く瞼を結んだ。 まだ、無駄な抵抗をする。 それとも神はこの様に心を失わない玩具をお望みなのだろうか。 それなら、それでいい。明日も貴方の為にこの玩具を辱め、鳴かせて差し上げます。 玩具の膝の間に溜まった蜂蜜色の液体が湯気をたてている。玩具は夢見るように瞼を閉じ、快楽と痛みの硲で喘いでいた。 見ているのは悪夢だろうか? 大丈夫だ、我々の手の内にあればお前は救われる。 今は悪夢に震えていても。 神から預かった玩具、その名を「 L 」という。 END 電流刺激による射精は気持ちいいんだか痛いんだか、らしいです。 とりあえずつらいものらしいです。 ちなみにこれは目黒さんから回していただいた「尿バトン」の回答でございます〜。 前から書きたかった魅上。楽しいなあ…!!また書きます… 尿はね、腹押して無理矢理じょろっ……!とかいいよね…。きっとそんなんも 別の人で書くですこの人… |