扉が開く。乗客が我先に外へ向かう。

僕は指をずるりと抜き、流河のジーンズを適当に引き上げ、半端にジッパーを閉めてやった。

いきなり指を抜かれた流河はへなへなとその場にしゃがみこんだ。はは、腰が立たないのかな?たった指 一本で。

「大丈夫?流河、立てる?」

しらじらしく聞く僕をいまいましそうに流河は睨んだ。そんな目、全然こわくないよ。甘い息を吐きなが ら、何を今更。

「気分が悪いです…手を貸してください」

僕は流河の背中に腕をまわし、引きずりながら電車を降りた。



ホームから改札へ降りるエレベーターは空いていた。黙っていた流河が口を開く。

「なんて事してくれたんですか…」
「面白かったよ。流河ったら目を白黒させちゃって。」
「悪ふざけはやめてくれと言ったでしょう」

僕は、口元だけで笑顔を作った。

「やめていいのか?」

流河が僕を見る。

「ここ、まだこんなじゃないか…。イケそうなところで放置したんだ、苦しいだろう?」
「やめっ… !!」

流河の、まだ固い芯の先端を指ではじくと、あ、と口を開いて奴は天井を見た。下着は下げたままジー ンズを半端にはかせたので、シャツをめくりあげるとピンク色の先端が顔を覗かせた。空をあおいだ流 河があわててうつむく。犯罪防止のビデオカメラを見つけたかな?安心しろよ、ちゃんと見えない角度 だろ。世界のLが、年下にいたずらされた位で慌てるなよ。それとも、もしかして。

エレベーターの扉が開く。はぁはぁ荒い息を吐きながら、猫背を更に丸めて前の膨らみを隠そうとし、 後ろに受けた痛みが流河の足取りを鈍らせていた。
僕は背中をかかえながら、耳元で囁いた。

「それ、なんとかしてやるよ」

流河の返事を待たず、僕は足のおぼつかない奴を引きずってトイレへ飛び込み、用具室からある看板を引っ張り出して 入り口の前へ置いた。     『清掃中』





「やめてください!!嫌です、本当に  …や、あ、あ!!」
何がやめてだよ。こんなに大きくして、出したくていやらしい汁を垂らしながら震えてる、これは何 だよ。僕はトイレの中が僕ら2人だけになったのを気配で確認し、個室の汚い壁に流河を押し付けて 細い腕を片手で後ろに捻りあげ、用意していた拘束バンドで両手を縛り上げると、下着とジーンズを膝まで下ろし、股間をしごいてやった。
流河の体が が壁を向いてしまい、うまく顔が見えないのが残念だが、膝をふるわせているくせに僕に蹴りをいれ ようとしてきたので仕方がない。足を割り開かせ、その間に立ち、慣れた様子だった流河の蹴りを封 じ込めた。先端からしたたる液はねばりを増し、僕の手でぬるぬると股間全体に広げてやる。
尿道口から亀頭を執拗にこすると、あ、あ、あ、と小さく短い声で鳴いた。

「流河ってさ、童貞だろ」
「な…に…」
「だって中学生みたいだよ。反応が過敏っていうか…中学生どころか自慰覚えたての小学生みたいだ。 違う?自分でやる事だってあんまりないんじゃないの?だって普通」

「ひ!」
指を尿道口にくりくりと回し入れる。後ろ斜めから見える横顔にじっとり汗が浮かんでいた。
「これくらいで、そんなにびくびくしちゃわないと思うよ。流河がいくつなのか知らないけど…。多 分僕よりは年上なんだろう?世界の、L、なんだし。」
「ああっ…!!!」
感じる亀頭の部分を指で捏ねくりまわされ、流河の青白い尻がすぼめられる。
はーっはーっと息を吐きながら、はしたない声を上げた流河は、自分からそんな声が出た事に驚いた様 にまた唇を噛んだ。まあね、あんまり大きな声だされても数メートル先には人がいるかもしれないし、 まあいいか。お前の嬌声もたっぷり聞いてみたい気もするけどね。
流河は観念したかの様にがくりとうつむき、上目遣いに僕を睨んだ。

「わかっているなら…さっさと終わらせて下さい。私はあまりこういう経験はありません…」

小さな声でそう呟くと、瞼を伏せた。怒りと望まない快感に声を震わせながら。自白を強制された無実の罪の囚人の様に。

「あまり?少しはあるってこと?」
「……他人との性行為は、私は経験ありません … 人に …体を触られるのも触るのも、苦手なん です…だから、もう…」

そうか。やっぱり。
自分が流河の、世界のLの初めての相手。その事実は僕をひどく興奮させた。そしてやはり潔癖気味 であるらしい体に、こんな汚らしい場所で、おそらく最も嫌悪する形で強いている性行為。無様だ。 無様だよ流河。L。なのにお前の痴態はとても魅力的だ。怯える瞳も睨む瞳も、血がにじむ唇もぞく ぞくする。噛み締めた唇が快感に負け開かれる時、どんな顔してるかお前知ってるのか?

姿を隠し、人と極度に触れ合わない生活を送ってきたお前は、小さな刺激でも敏感に反応する。うまく 仕込めば淫乱の素質有り、だ。
「聞いてますか、夜神く… あ、ぁぁ  ぁ !!!」

僕は流河の、焦らされすぎて いやらしい涎でてらてらと光った性器を一気に先端までしごきあげた。
流河は痛々しいほど肉の薄い背中を大きくのけぞらせ、びく、びく、と数回痙攣したかと思うと、壁 に向かって花火のように白濁を撒き散らした。



ぽたぽたと飛びきれなかった液をしたたらせ、唇からも、あられもなく涎をたらし、果てた流河はドン と自分が汚していない側の壁にもたれかかった。細い太腿がガクガク震えている。だがまだ瞳には激しい 怒りの炎が見てとれた。

「もう、遊びはおわりですよ… さっさと大学へ行きましょう」

こんな状態になっても学校の事を忘れていないなんて、さすがだね。まだ愛撫の後に疼いて思い通り にならない体のくせに、その精神力に感服する。でも。でもね流河。

「まだだよ」
「は…?」
「まだ終わってない」
「………」
「僕のは、どうするんだよ。まだ終わってないよ」
「!!!」

ズボンのジッパーを開き、取り出した僕のそれを見た流河の大きな目が極限まで見開かれる。そして僕に 向かって体当たりをかましてきた。だが、ふらつく足の流河を僕はかわし、その勢いを利用して洋式便座 の上に仰向けに組み敷いた。暴れる足をなんとか押さえつけ、片足ずつ服を取り去ると、細い体を二つに 折り、足の間から頭を入れ、太腿を抱え上げた。
ふと流河の力が抜ける。
一瞬見せた野生動物の様な切れのある表情はまた影を潜め、いつもの真っ黒な底なし沼の様な瞳が僕を見 ていた。

「わかりましたよ、夜神くん…降参です」
「え?」

こんな簡単に?

「抵抗するだけ無駄だとよくわかりました。私は体が緩んで力が出ないし、抗っても疲れるだけです。 先ほども言いましたが、さっさと済ませてください。そうですね、10分以内に。それだけ時間があれば 処理には十分でしょう」

淡々と語る流河の声で、僕の血が氷のように冷えていくのがわかる。こいつは、僕が自分の何を楽しんで いるのか悟ったのだ。嫌だと身をよじれば僕が喜ぶ。だから人形の様に動かなくなる。抵抗しても同じ事 なら、体を預けてさっさと終わらせる。合理的だ。実にLらしい。

腹立たしいよ。

ならば。どうせ同じ事だ。抵抗しようとしまいと。